2022/11/30

国外居住親族に係る扶養控除等について

国外居住親族とは

国外居住親族とは非居住者である親族に該当する者をいいます。

非居住者とは居住者以外の個人をいいます。

また、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます。
(注)「住所」とは、生活の本拠のことをいいます。生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定されます。また、「居所」とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないもの(そこがその者の生活の本拠であるというまでには至らない場所)をいうものとされています。

尚、所得税法における「親族」は、民法の規定による親族、すなわち、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族とされます。これは、国外居住親族の場合も同じです。

国外居住親族に係る扶養控除等の制度の概要

居住者が、国外居住親族について扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除(以下「扶養控除等」といいます。)の適用を受けるためには、給与等又は公的年金等の支払者に一定の確認書類(親族関係書類・送金関係書類)の提出又は提示をする必要があります。

また、令和5年1月からは、扶養控除の対象となる国外居住親族は、扶養親族(居住者の親族のうち、合計所得金額が 48 万円以下である者をいいます。以下同じです。)のうち、次の(1)から(3)までのいずれかに該当する者に限られることとされました(注)。
さらに、その国外居住親族について、扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等又は公的年金等の支払者に一定の確認書類(親族関係書類・留学ビザ等書類・送金関係書類・38 万円送金書類)の提出又は提示をする必要があります。
(1) 年齢 16 歳以上 30 歳未満の者
(2) 年齢 70 歳以上の者
(3) 年齢 30 歳以上 70 歳未満の者のうち、次の①から③までのいずれかに該当する者
① 留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
② 障害者
③ その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を 38 万円
以上受けている者

簡単にまとめると今回の改正による変更点は、扶養控除等の適用対象者から、日本国外に居住する親族のうち30歳以上70歳未満の者が原則除外されますが、上記の(3)の①②③に該当する場合は例外的に適用対象者とするという事です。

(注) この国外居住親族に係る扶養控除等の取扱いは、令和5年1月以後に支払を受けるべき給与等又は公的年金等から適用されます。

国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受けるための手続の概要

給与等又は公的年金等について、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受けようとする居住者は、次のとおり、給与等又は公的年金等の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの申告書を提出する際、その国外居住親族に係る「確認書類」(「親族関係書類」、「留学ビザ等書類」、「送金関係書類」又は「38 万円送金書類」をいいます。)の提出又は提示をする必要があります。

(注) なお、確定申告において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受けようとする場合も、「確認書類」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示する必要があります。ただし、給与等の支払者に既に提出し、又は提示したことにより年末調整において扶養控除等の適用を受けている場合の「確認書類」については、その必要はありません。

提出又は提示をする書類をもう少し掘り下げます。

「親族関係書類」とは具体的に下記の物を指します。

①戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し

②外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

「送金関係書類」とは具体的に下記の物を指します。

① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類

② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領し、又は受領することとなることを明らかにする書類

ここで注意が必要なのは、これら送金関係書類は国外居住親族各人に必要という事です。例えば海外に居住している両親を扶養に入れるためには父親・母親の双方の口座に送金を行わなくてはなりません。例えば手数料削減のために母親の口座に2人分の生活費を送金した場合は父親の扶養は認められない事になります。

まとめ

今回の改正は特に外国人労働者にとって影響が大きくなると予測されます。
令和5年になって扶養控除等の要件を知らなかったり、誤認していた場合に祖国のご家族を扶養に入れられなくなり、税負担が増加してしまうケースも出てくるかもしれません。
特に年齢 30 歳以上 70 歳未満の者の国外居住親族に対する38万円送金基準については注意が必要です。

下記の国税庁サイトにより詳細なQ&Aが記載されていますので、該当する方や年末調整事務に携わる方は一度目を通して頂いて適正な年末調整が行われるようにして頂けると幸いです。

記.名古屋業務2課