2021/07/26

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。
また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。このように相続時精算課税の制度は贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて計算いたします。

相続時精算課税制度のメリット

1.2500万円まで贈与税がかからない。
贈与者の財産が相続税の基礎控除以下であるような場合には、相続時に贈与分を加算しても相続税がかからないため、一切税金をかけずに財産を生前贈与することが可能になります。
子供や孫の住宅取得や起業資金を贈与したい場合など、2,500万円まで無税で贈与ができます。

2.相続争いをさけられる。
贈与者の意志により生前に贈与するので分割協議が必要なく財産分けの争いが起きにくいです。

3.収益財産を贈与することにより相続税の節税につながる。
賃貸不動産など収益財産がある場合、その家賃収入などはすべて贈与者の将来の相続財産にとして蓄積されます。
しかし、早期に収益財産を次の世代へ移転することで、相続財産となるはずの不動産収入が子供や孫に移転され相続税の節税となる。

4.将来価値が上がる財産は節税対策となる
相続時精算課税制度では、贈与時に無税であっても、相続時に相続税を支払う必要があります。しかし、相続時精算課税を適用した贈与財産の評価額は「生前贈与時点での評価額」となります。つまり、生前贈与時より相続時の方が不動産価値が上がっていたとしても、相続税は生前贈与時点での評価額で計算されるため、相続税額が節税できる。逆に価値が下がった場合には、次に述べるようにデメリットとなります。

相続時精算課税制度のデメリット

1.暦年課税を利用できなくなる
相続時精算課税制度を一度利用すると、その後、その贈与者からの贈与については全て相続時精算課税制度が継続されるので、暦年課税による贈与はできないことになります。

2.小規模宅地等の特例の適用を受けられない
小規模宅地等の特例とは、相続税の土地評価の軽減制度で、相続した土地のうち一定の面積分にかかる相続税を、最大80%減額することができるというものです。相続時精算課税制度を利用した土地についてはこの特例を受けることはできなくなります。

3.将来価値が下がりそうな財産の場合は税金を多く支払う可能性も
先のメリットに書いたように将来値上がりが予想される不動産の場合は、評価額が低いうちに贈与することで節税効果が期待できます。しかし反対に、財産が値下がりした場合でも、贈与時の高い評価額のまま相続税が計算されるため、この制度を利用したことにより、余分に税金を支払うことになってしまいます。

4.登録免許税や不動産取得税が高額
贈与の場合には登録免許税も不動産取得税も相続の場合と比べて非常に高額となります。

以上の点を考えてどの財産について適用させるのがより良い結果となるか判断してください。

そして、実際の相続の際には既に所有権が移転しているので相続財産に加算することを忘れてしまう間違いも起こしやすいので気を付けてください。

記.名古屋事務所1課