2021/07/12

NISAについて

NISA誕生の背景

過去20年で、欧米諸国では家計の資産が約3倍程度増加しているのに対し、日本では約1.5倍程度しか増加しませんでした。

この欧米諸国と日本の家計資産の伸び率の差の原因は、単純にポートフォリオの差と考えられています。

ひと昔前までは、日本人はとにかく「貯金」が好きで、投資については「悪」というイメージを持っていた人も非常に多かったことから、資産構成が「現預金」に大幅に偏った家庭が圧倒的に多かったわけですね。

それに対して欧米諸国の方は、投資や資産運用に対しては小さいころから教育を受けて身近な存在であることから全く抵抗がなく、株式、投資信託、金・銀・プラチナ、REITなどで、バランスの良いポートフォリオを組んでいる家庭が多かったわけです。

そのことを非常に問題視していた金融庁や、証券税制の税率を上げたい与党、金融機関等のいろいろ思惑などが相まって、NISAが(やや中途半端な形?で)誕生した訳です。

今までのNISA

NISAは2014年にスタートし、その後2016年にはジュニアNISAが、2018年にはつみたてNISAが誕生しました。
それぞれの概要は次の通りです。

一般NISA

日本にお住まいの20歳以上の人が対象。
1人1口座(つみたてNISAとの選択式)
非課税対象は株式、投資信託等への投資から得られる配当金・分配金・譲渡益。
年間の非課税枠は120万円(5年で最大600万円)で非課税期間は最長5年間。
投資できる期間は2023年までで、2019年以降の投資分はロールオーバー不可。
未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできない(以下のNISAも全て同じ)

ジュニアNISA

日本にお住まいの0~19歳の人が対象。
1人1口座。
非課税対象はNISAと同じ。
年間の非課税枠は80万円(5年で最大600万円)で非課税期間は最長5年間。
ロールオーバー可能。
投資できる期間は2023年まで
運用管理者は口座開設者本人の二親等以内の親族。 
通常は18歳まで払い戻しできない(災害等特別の事情のみ払戻し可)。

つみたてNISA

日本にお住まいの20歳以上の人が対象。
1人1口座(一般NISAとの選択式)
非課税対象は一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益。
対象商品は長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託。
年間の非課税枠は40万円(20年で最大800万円)で非課税期間は最長20
年間。ただし、2019年以降の投資分は非課税期間が1年ずつ短くなる。
配当についても非課税とすることができる。
投資できる期間は2037年までで、ロールオーバー不可。

新しいNISA

2024年からは次のようになります。

新NISA

仕組みが変わり2階建て構造となりました。
1階部分は「安定投資」(基本的につみたてNISAの商品)で行う商品で年間20万円(5年で最大100万円)まで5年間非課税となります。2階部分は今までの一般NISAと同様の商品で年間102万円(5年で最大510万円)まで5年間非課税となります。
原則として1階部分の投資をしないと2階部分の投資はできないようですが、これまでNISA口座を利用している人は、申請することにより上場株式のみ2階部分の投資だけをすることもできるようです。
新規に投資できる期間は2028年までで、2024年以降のロールオーバーは出来なくなります。
なお、1階部分については、つみたてNISAへのロールオーバー可能です。現行一般NISAからのロールオーバーも可能となりますが、ハイリスク商品などはロールオーバーできない場合もあります。
その他の要件等は概ね現行と同様。

ジュニアNISA

2023年12月で終了。
そのため、払い出し制限も解除されます。
なお、当初の非課税期間(5年間)の満了を迎えても、一定金額までは20歳になるまで引き続き非課税で保有できる。

つみたてNISA

現行の制度のまま2042年まで延長。

個人的な感想としては、そもそも制度のスタートが「多くの日本人に長期投資を沢山して欲しい」ということであるならば、もっと利用しやすい制度とし、制度の内容も長期間変更しないということが重要なのではないでしょうか?
数年単位でコロコロ制度を変えられては、投資初心者の方々はいっそう手を付けにくいものとなってしまうと考えます。

記.名古屋事務所1課