2021/07/02

令和3年度のキャリアアップ助成金

令和3年4月1日以降に取り組みを実施した場合のキャリアアップ助成金の中の「正社員化コース」についてご説明させていただきます。

正社員化コースとは

正社員化コースとは有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合に助成されるものです。

・支給額
①有期雇用→正規雇用:57万円
②有期雇用→無期雇用:28万5,000円
③無期雇用→正規雇用:28万5,000円

・各種加算措置
(1) 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合 28万5,000円
(2) 母子家庭の母等または父子家庭の父を転換等した場合 95,000円
(3) 勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を
当該雇用区分に転換または直接雇用した場合<1事業所当たり1回のみ> 95,000円

有期契約とは、契約期間が有限ということですのでいつからいつまでと契約期間が予め定められて雇用契約を締結しているということです。(主に契約社員等が該当)

無期契約とは、同じ理屈でいくと契約期間が無限ということなので契約期間が予め定められていない雇用契約となります。(主にパート、アルバイト等が該当)

そして、正規雇用とはいわゆる正社員に該当し契約期間が予め定められておらず、就業時間は会社の所定労働時間勤務することまた社会保険の加入義務があることが正規雇用となります。

助成金の支給要件

正規雇用等へ転換等した際、転換等前の6か月と転換等後の6か月の「賃金」を比較して「3%以上増額」していること
※ 今回の「賃金」とは基本給および定額で支給されている諸手当を含む賃金の総額であり「賞与は含めない」こととする。

賃金が3%以上増加していることの確認にあたっては、転換前後の諸手当を含めた賃金総額について比較しますが、一部賃金総額には含めることのできない手当などがあります。
①実費補填であるもの(通勤手当や住宅手当など)
②毎月の状況により変動することが見込まれるため、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの(歩合給や精勤手当など)
③賞与(一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当) については、名称を問わず賃金総額に含めることができません。
上記等が賃金増額分に含めることのできない手当に該当します。

また、事業主側にも要件があり
・有期雇用労働者等を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定している事業主であること。
・雇用保険適用事業所の事業主であること。
・当該転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた事業主以外の者であること。
などが挙げられます。

令和3年度からの変更点

令和3年4月1日以降に取り組みを実施した場合にそれ以前と比較して大きく変更された点は
・賃金の増額割合が5%→3%へ引き下げられた
・賃金の総額に賞与を含む→賞与を含めない
こちらの2点になります。
賞与を含められなくなった点は、事業主側にとっては制度を使いづらく感じる場合もあると思いますが5%から3%へ引き下げられた点については今まで以上に活用できる場面が増えそうです。

制度活用時の注意点

・キャリアアップ助成金を受給するにあたって必須になってくるのが就業規則です。
就業規則の届け出が無い事業所は本助成金を申請することができません。本助成金を受給する為に就業規則の届け出を社会保険労務士など外部に委託する場合は費用が発生し、転換する従業員が1人の場合は受給額よりも費用負担の方が大きくなってしまう場合もあるので、継続的に転換を検討されている事業主でないと本助成金を最大限に活用することができない可能性があります。

・基本給部分を3%増額しそれ以外の手当などは減額しない場合でもみなし残業代(固定残業)が含まれている場合はこちらの増額も必須になってきます。みなし残業代は基本給部分が計算の基礎となっているので基本給が増額した場合必然的にみなし残業代も増額しなければ、みなし残業の時間数が減ることとなり処遇改善とはなりません。

受給までにある程度の期間が必要であったり費用負担はありますが一度申請をしてしまえば、次回以降は費用負担が大幅に減るので継続的に人材の確保や処遇改善を試みようとしている事業主にとっては事業主、労働者共にメリットのある制度です。ご検討の方は厚生労働省HP「キャリアアップ助成金」をご覧ください。

記.名古屋事務所2課