2021/06/02

健康診断費用の会社経費

健康診断費用を経費とする要件

役員や従業員が受診した健康診断費用を経費「福利厚生費」として計上するためには、以下の要件を満たす必要があります。

①全従業員及び役員が健康診断を受診できること
②健康診断費用が世間一般の相場金額であること
③会社が健康診断費用を受診した医療機関へ直接支払っていること

ただし、全従業員という点については公平性が損なわなければ、年齢制限を設けることなど一定の条件を課すことは可能です。
例えば、35歳未満は定期健康診断とし、35歳以上は成人病予防のため、人間ドックを受診するように規定することも可能です。

また、健康診断費用の世間一般の相場金額については、一般的に実施されている2日程度の人間ドック検診費用で著しく高額でないものであれば、福利厚生費として処理することは可能です。
逆に著しく高額とみなされる可能性のある健康診断費用は費用が数十万円程度必要になる「PET(がん)検診」やハイメディック(高度健康診断)などが考えられますので、注意が必要です。

あと健康診断や人間ドック費用は、会社から直接診療機関への支払いが必要です。会社からの直接払いが困難で個人が立替払いする場合、医療機関に会社宛の領収証を発行してもらいましょう。

健康診断の申込についても会社から受診する医療機関へ申込をする方が無難です。

役員のみ受診した場合の取り扱い

役員のみが健康診断を受診し、従業員には健康診断を受診させない場合については

①全従業員及び役員が健康診断を受診できること の要件から外れるため、経費「福利厚生費」としては計上できません。

このケースの場合、「福利厚生費」ではなく、「役員賞与」として取り扱うことになります。
役員賞与の場合、法人税の計算上、法人の経費になりません。
また、役員賞与に対して源泉所得税の対象になりますし、翌年の住民税も課税されることになります。

事前確定届出給与の届出を税務署へ提出しておけば、役員賞与は損金として計上可能なので、対応策になりそうですが、健康診断費用と健康診断日を前もって決めておいて、その通りに実行することは現実的ではないように思えます。

役員しかいない会社の場合については、将来的に従業員を雇うことを想定して、就業規則の健康診断受診規定を整備し、従業員を雇用した場合はこの規定を運用できるようにしてある場合は経費「福利厚生費」として認められる可能性があります。
ただ、税務調査官が実態を確認した上での判断になっていくものと思われます。

まとめ

健康診断費用については、世間一般的に運用されているものであれば、法人の経費として問題なく計上できますが、公平性を欠いていたり著しく高額であるものについては、税務署は経費として認めてくれませんので注意が必要です。

記.名古屋事務所1課