2021/02/16

確定申告の損益通算について

損益通算とは?

損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについてのみ、一定の順序にしたがって総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することをいいます。

損益通算の対象となる所得の範囲とは?

所得の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算の対象となる所得は次の所得になります。

(1)不動産所得
(2)事業所得
(3)譲渡所得
(4)山林所得

(注)
1.利子所得及び退職所得は、所得金額の計算上損失が生じることはありません。
2.配当所得、給与所得、一時所得及び雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。
3.生活に通常必要でない資産に係る所得の金額の計算上生じた損失は、競走馬の譲渡に係るもので一定の場合を除き、他の各種所得の金額と損益通算できません。
なお、生活に通常必要でない資産とは、次に掲げる資産になります。

(1)競走馬、その他射こう的行為の手段となる動産
(2)主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産
(3)主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)
(4)生活の用に供する動産で、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等
※上記(3)については、平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用されます。

4.不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、次に掲げるような損失の金額は、その損失が生じなかったものとみなされ、他の各種所得の金額から控除することはできません。
(1)別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
(2)土地(土地の上に存する権利を含みます。)を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額
(3)一定の組合契約に基づいて営まれる事業から生じたもので、その組合の特定組合員に係るもの

5.申告分離課税の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失がある場合は、株式等に係る譲渡所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。 
また逆に、株式等に係る譲渡所得等以外の所得の損失も、株式等に係る譲渡所得等の金額との損益通算はできません。
ただし、平成21年分以後の所得税の確定申告において、上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額がある場合には、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得の金額(平成28年分以後の確定申告については、上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額)から控除することができます(当該上場株式等に係る配当所得の金額(平成28年分以後の確定申告については、上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額の合計額)を限度とします。)。

6.申告分離課税の先物取引に係る雑所得等の金額の計算上生じた損失がある場合は、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
また逆に、先物取引に係る雑所得等以外の所得の損失も、先物取引に係る雑所得等の金額との損益通算はできません。

7.譲渡所得の金額の計算上生じた損失のうち、一定の居住用財産以外の土地建物等の譲渡所得の金額の計算上生じた損失がある場合は、土地建物等の譲渡所得以外の所得の金額との損益通算はできません。
また逆に、土地建物等の譲渡所得以外の所得の損失も、土地建物等の譲渡所得の金額との損益通算はできません。

損益通算の順序は?

不動産、事業、譲渡及び山林の各所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、次の順序で損益の通算を行います。

1.利子、配当、不動産、事業、給与及び雑の各所得の金額(経常所得金額……以下Aグループという。)のうち不動産所得又は事業所得の金額の計算上損失を生じたときは、その損失の金額をまずAグループ内の他の所得の金額から差し引く。

2.譲渡所得の金額及び一時所得の金額(以下Bグループという。)の計算上損失を生じたときは、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額のみを一時所得の金額から差し引き、一時所得の損失は打ち切られる。

3.1の計算(Aグループ内の通算)を行ってもなお引ききれないAグル ープの損失の金額は、譲渡所得の金額及び一時所得の金額(Bグループ内の通算後の金額)から順次差し引く。

4.2の計算(Bグループ内の通算)を行ってもなお引ききれないBグループの損失の金額は、Aグループの金額(Aグループ内の通算後の金額)から差し引く。

5.3又は4の計算を行ってもなお引ききれない損失の金額は、これをまず山林所得の金額から差し引き、次に退職所得の金額から差し引く。

6.山林所得の金額の計算上損失を生じたときは、これをまずAグループの所得の金額(1又は4の計算が行われる場合には、その計算後の金額)から差し引き、次に譲渡所得の金額及び一時所得の金額(2又は3の計算が行われる場合にはその計算後の金額)から差し引き、最後に退職所得の金額(5の計算が行われる場合には、その計算後の金額)から差し引く。

7.1から6までの計算を行ってもなお引ききれない損失の金額は、その年分の純損失の金額となります。

※変動所得の損失等の損益通算及び居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例及び特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例については割愛させて頂きます。

記.大阪事務所1課