2021/01/26

コロナ禍の確定申告・納付期限について

令和2年分の確定申告期限について

令和2年分の確定申告について、法令で規定されている申告期限は下記のとおりです。

所得税及び復興特別所得税、贈与税・・・令和3年3月15日
消費税及び地方消費税(個人事業者)・・・令和3年3月31日 

以前から、申告期限までに申告することができないと認められる「やむを得ない理由」がある場合には、個別指定による期限延長が認められることになっていました。

新型コロナウイルス感染症に関しては、その影響により申告書などの作成が遅れ、確定申告期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、この「やむを得ない理由」に該当し、個別の期限延長が認められます。

どういった状況になると個別の期限延長が認められる場合とされるかは、下記のような例示が示されています。

〔個人・法人共通〕

(1) 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと
(2) 納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること
(3) 次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと

① 経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
② 学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
③ 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと

〔個人〕

(4) 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること
(5) 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと
① 感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
② 発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
③ 基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある
(6) 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること

〔法人〕

(7) 感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと

上記以外にも、個別の申請により申告期限等が延長される場合があります。令和元年分の申告時には、もう少し柔軟な対応がとれる例示が公表されていました。個別延長の取り扱いに注意が必要になりそうです。
※「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」参照

申請方法と期限延長期間について

個別の期限延長の手続きは、原則として納税地を管轄する税務署長に対し、災害その他やむを得ない理由がやんだ日後、相当の期間内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出すると、税務署長が指定した日まで期限が延長されます。
※税務署長が指定した日は、災害その他やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内とされています。

今回の新型コロナウイルスによる申請は、申請書の提出に代えて、簡便な申請が認められています。書面で申告書を提出・・・申告書等の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と付記電子申告で申告書を提出・・・所定の欄(送付状)にその旨を入力。この場合、申告・納付期限は、原則として申告書の提出日となります。

令和元年分の申告時には、簡便な申請を選択された方が多かったように思います。

令和元年分の確定申告を提出していない方の留意点

新型コロナウイルス感染症の影響によって令和元年分の確定申告書を未提出の方が令和元年分の申告書を、令和2年分確定申告の法定申告期限以降に申告した場合には、災害その他やむを得ない理由」があると認められる場合を除き、原則として期限後申告として取り扱われることになりました。

また、令和元年分の所得税等の確定申告書を提出する前に、他の申告書や申請書等を提出した場合は、令和元年分の所得税等の確定申告をすることができないやむを得ない理由があったとは原則認められず、令和元年分の申告は期限後申告として取扱われるようです。
※例えば、令和3年3月1日に所得税の青色申告承認申請書を提出した後に、令和3年3月15日に令和元年分の申告所得税の確定申告書を提出した場合は、原則、期限後申告として取り扱われることとなります。

令和2年分の確定申告を行った段階で、令和元年分だけが申告できないやむを得ない理由が存在するとは考えにくいことから、新型コロナウイルス感染症の影響による個別の期限延長は基本的に認められないという考え方が理由になります。

新型コロナウイルスの状況により、申告期限の取り扱いに変更が生じる可能性がありますので申告前に再度確認が必要と思われます。

記.東京事務所2課