2020/02/12

実家を売却した場合の特例(相続税編)

前提

建物 1.母屋(昭和44年建築で床面積180㎡) 
   2.離れ(母屋とは別の独立した建物で床面積50㎡)
   3.車庫(床面積10㎡)
   合計240㎡

土地 合計100坪(330㎡)
  
所有者 全て母の所有で1人暮らし(父は数年前に他界)

母が生前に売却した場合(3,000万円特別控除)

高齢のため老人ホームに入る資金として母が前提条件の建物と土地をまとめて1億円で売却しました。
マイホームを売却した場合は、自宅という生活基盤の売却のため適用要件を満たすと売却益から3,000万円を特別控除できる特例があります。
建物部分と敷地部分の譲渡益から控除できます。
特例の適用範囲は、社会通念上、母屋とその他の建物等が一体として自己の居住の用に供していると認められる部分が対象になります。 
そのため居住の用に供していると認められれば家屋、離れ、車庫と土地100坪全部が対象となります。

具体的には土地建物の取得費が5千万円だとすると

1億円(売却金額)- 5千万円(取得費) - 3千万円(特別控除) =2千万円(売却益)  
   
所得税と住民税は400万円(2千万円×20%)です。

母の死亡後、相続人が空き家を売却した場合(相続空き家の特例)

母が亡くなり実家は空き家となりました。 
実家を相続した相続人が建物と土地をまとめて1億円で売却しました。 
この場合は売却した時には母はもちろん相続人も居住していないため上記1の「3000万円特別控除」の特例は使えません。
しかし要件を満たせば「相続空き家の特例」として上記1の特例と同様に売却益から3000万円を特別控除できます。 
ただ対象となる建物と敷地の範囲が異なります。上記1の特例は居住の用に供していると認められれば建物と土地の全体が対象でした。
しかし、この相続空き家の特例対象となるのは建物は母屋部分のみです。土地も母屋に対応する土地75坪のみです。
  
なぜなら特例の適用範囲を定める条文に
  
相続開始の直前に主として被相続人が居住の用に供していたと認められる「一の建築物のみ」及び「それに対応する敷地のみ」と規定されているためです。 

特例対象となる土地の具体的な計算方法は
  
100坪(土地全体) ×  180㎡(母屋の床面積) ÷ 240㎡(建物床面積合計)=75坪 
 
生前、母が老人ホームに入居するまでは社会通念上、母屋と一体として離れや車庫も居住の用に供していると認められても、家屋は母屋のみ敷地は母屋分しか相続空き家の特例の対象となりません。
  
一の建築物とは「一棟の建築物」をいいますので、母屋とは別棟の離れが渡り廊下で接続されている場合でも、母屋とその別棟の離れが「それぞれ一の建築物」に該当し離れは特例の対象になりません。
相続後に車庫と離れを取壊してから譲渡すれば土地全体が特例の対象になりそうですが、判定は相続開始時の現況により判断するため、相続後に取壊しても母屋部分のみが対象になります。
また車庫が未登記だったり、離れを母以外の相続人が所有している場合でも上記算式の建物の床面積合計に含めます。
  
同じ居住用家屋と土地の譲渡でも対象範囲が異なります。 
また適用要件も複数ありますので、まず特例が適用出来るかどうかを事前に専門家等に確認してから売却することをお勧めします。