2019/02/27

土地・建物を売った場合の譲渡所得

土地・建物を売った場合は、分離課税の譲渡所得

課税の方法

土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。

計算方法

譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用及び特別控除を差し引いて計算します。

(1)取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。
なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。また、土地や建物の取得費が分からなかったり実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。

(2)譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。

(3)特別控除は、通常の場合ありませんが、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除など各種の特例があります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分

土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。

長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。

短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

(注)「所有期間」とは、土地や建物の取得の日から引き続き所有していた期間をいいます。この場合、相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています。

事業の使用の有無・取得費・譲渡費用

取得費は、土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。

しかし、建物の場合には、その建物の建築代金や購入代金などの合計額がそのまま取得費になるわけではありません。

建物は使用したり、期間が経過することによって価値が減少していきます。したがって、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引く必要があります。

この減価償却費相当額は、その建物が事業に使われていた場合とそれ以外の場合では異なっており、それぞれ次に掲げる額となります。

事業に使われていた場合

建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額になります。
(注)仮に毎年の減価償却費の額を必要経費としていない部分があったとしても、毎年の減価償却費の合計額とすることに変わりはありません。

事業に使われていなかった場合

建物の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します。

また、上記2(1)のほか取得費に含まれる主なものは次の通りになります。ただし、事業所得などの必要経費に算入されたものは含まれません。

(1)土地や建物を購入(贈与、相続又は遺贈による取得も含みます。)したときに納めた登録免許税(登記費用も含みます。)、不動産
取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税なお、業務の用に供される資産の場合には、これらの税金は取得費に含まれません。

(2)借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料

(3)土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用

(4)土地の取得に際して支払った土地の測量費

(5)所有権などを確保するために要した訴訟費用
これは、例えば所有者について争いのある土地を購入した後、紛争を解決して土地を自分のものにした場合に、それまでにかかった訴訟費用のことをいいます。
なお、相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は、取得費になりません。

(6)建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用

(7)土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子

(8)既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金

上記2(2)のほかの譲渡費用に含まれる主なものは次のものがあります。

(1)既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです。

(2)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

長期・短期の場合の税率は異なるの?

長期一般譲渡所得の税額の計算

税額=課税長期譲渡所得金額×20%(内住民税5%)

(注)平成25年から平成49年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

(例)

30年前に購入した土地、建物の譲渡価額が1億5,500万円、土地・建物の取得費(建物は減価償却費相当額を控除した後)が1億円、譲渡費用(仲介手数料など)が500万円の場合

(1)課税長期譲渡所得金額の計算

1億5,500万円-(1億円+500万円)=5,000万円

(2)税額の計算

イ 所得税

5,000万円×15%=750万円

ロ 復興特別所得税

750万円×2.1%=15万7500円

ハ 住民税

5,000万円×5%=250万円

ニ 合計 1,015万7500円

短期一般譲渡所得の税額の計算

税額=課税短期譲渡所得金額×39%(内住民税9%)

(注)平成25年から平成49年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

(例)

所有期間が5年以下
課税短期譲渡所得金額が同じく5,000万円の場合

(1)所得税

5,000万円×30%=1,500万円

(2)復興特別所得税

1,500万円×2.1%=31万5,000円

(3)住民税

5,000万円×9%=450万円

(4) 合計 1,981万5,000円

※ 長期譲渡所得の方が税額はかなり少なくなりますね。