2019/09/18

成年年齢の引き下げに伴う相続税・贈与税への影響

民法の改正

日本の成年年齢は明治9年以来、20歳とされていますが、平成30年6月13日に民法の一部を改正する法律が成立し、成年年齢が18歳に引き下げられることとなりました。
選挙権年齢の18歳への引き下げ(平成28年6月19日施行)や今回一緒に改正された女性の婚姻開始年齢の18歳への引き上げなどの一連の成人年齢の見直しの政策により改正がされました。
令和4年4月1日に施行され、その時点で18歳以上で20歳未満の方(平成14年4月2日生まれから平成16年4月1日生まれ)は、その時点で一度に成年に達することとなります。

成年に達することで、単独で有効な契約をすることができるようになり、父母の親権に服さなくなることとなります。
そのため、不動産の賃貸契約、様々なサービスの利用契約、ローン契約などこれまでの18歳~19歳では単独で行えなかった契約が行なえることとなります。また、親権に服さないことにより自分の住む場所や進学就職先などの進路決定についても、単独の意志で法的には決定することができます。

その他、10年有効なパスポートの取得や、公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと、性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳からできるようになります。

ただ、民法の成年年齢が引き下げられても、変わらない年齢制限もあります。
たばこやお酒については、健康被害への懸念から20歳のまま維持され、公営競技(競馬、競輪、競艇、オートレース)については、ギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとなっています。

相続税、贈与税への影響 その1

それでは民法上の成年年齢の引き下げは相続税と贈与税においてはどのような影響があるでしょうか?
相続税・贈与税において20歳を年齢要件とする規定があります。
それらについて、民法の成年年齢の引き下げに合わせ、税制上の年齢要件も見直されることとなりした。

以下で改正された内容を具体的にお伝え致します。

①「相続税の未成年者控除」

未成年者控除とは、相続人が20歳未満である場合に、納付すべき相続税額から年齢に応じて以下の金額を控除することができる制度です。

未成年者控除 = (20歳 - 相続開始時の年齢) × 10万円

この場合における20歳未満の年齢要件が18歳未満に改正されました。

②「贈与税の相続時精算課税の制度」

相続時精算課税の制度とは、20歳以上の受贈者(子又は孫)が、60歳以上の贈与者(父母又は祖父母)から財産の贈与を受けた場合に、暦年課税に代えて選択できる制度で、贈与財産額から特別控除額(限度額2,500万円)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて贈与税を計算します。

そして、その後贈与者が死亡した場合に、相続税の計算上、相続時精算課税を適用した財産の価額(贈与時の時価)を含めて相続税を計算し、既に納めた贈与税を控除する制度です。

この場合における受贈者20歳以上の年齢要件が18歳以上に改正されました。

③「贈与税の直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例」

贈与税の暦年課税における税率は、父母や祖父母などの直系尊属から子や孫などで20歳以上の者(その年の1月1日において)へ贈与した場合の税率(特別税率)とその他の贈与の場合の税率(一般税率)の複数税率となっています。

この場合の特別税率における年齢要件が20歳以上から18歳以上に改正がされました。

④「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」

この制度はいわゆる事業承継税制といわれる制度で、先代経営者から後継者へ非上場株式を贈与した場合において、一定の要件を満たすときはその贈与に関する贈与税の納税を猶予する制度です。
一定の要件には後継者である「経営承継受贈者」と「特例経営承継受贈者」の年齢要件について、贈与の日において20歳以上であることとされていますが、18歳以上に改正されました。

⑤遺産分割協議における特別代理人の選任

未成年者は財産に関わる法律行為が単独で行うことができないため、親権者を法定代理人とする必要があります。
しかし未成年者及び親権者の双方が相続人の場合は、お互いの利益が対立してしまうため(利益相反行為)、特別代理人の選任が必要です。この場合における未成年者の年齢要件が20歳から18歳へ変わることになります。

①~④の税制上の改正については、民法の施行日との整合性を保つために、令和4年4月1日以後に相続若しくは贈与により取得した財産に関する相続税又は贈与税について適用されることとなります。
そのため、同じ18歳でも、令和4年3月31日以前に生じた相続・贈与と令和4年4月1日生じた相続・贈与とでは取扱いが変わってしまうので、令和4年中に生じた相続・贈与については注意が必要です。