2019/03/27

財産分与

財産分与って何?

財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。民法においても離婚の際には、相手方に対し財産の分与を請求することができると定めています。

財産分与の種類

財産分与には、大きく分けて3つの種類があります。

①清算的財産分与
夫婦が婚姻中に形成した財産の清算

②扶養的財産分与
離婚により困窮する(元)配偶者の扶養

③慰謝料的財産分与
傷つけたことに対する慰謝料としての意味を含むもの

財産分与の対象となる財産

①財産分与の対象となるもの
財産分与の対象となる財産は夫婦共有財産が対象となります。共有財産かどうかの判断は、財産の名義によるのではなく実質的な判断によります。婚姻中に夫婦の協力により形成・維持されてきた財産であれば、名義を問わず、財産分与の対象である共有財産との判断がなされることになります。

②財産分与の対象とならないもの
財産分与の対象にはならない財産として、「特有財産」というものがあります。
特有財産とは、「婚姻前から片方が有していた財産」と「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」のことをいいます。

③マイナスの財産について
借金などの債務については、夫婦の共同生活を営むために生じた借金であれば、夫婦共同の債務として財産分与において考慮されるべきですが、もっぱら自分のために借り入れた個人的な借金は、財産分与において考慮されないと考えます。

財産分与の方法

財産分与の方法は、次のような方法によります。
①協議
話し合いによって財産分与を取り決める。
財産分与は当事者が納得さえすれば、当事者の合意によって定めることができます。

②離婚調停
当事者の話し合いでまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。
*調停とは第三者が仲介して当事者間に合意を成立させる制度です。

③離婚審判
夫婦間の意向の違いなどで、調停でも離婚が成立する見込みがなく、かつ家庭裁判所が相当と認めたときには、家庭裁判所が独自の判断のもとに「調停に代わる審判」によって、離婚を成立させることです。

④離婚訴訟
①、②、③でも成立しなかった場合、訴訟を起こし、裁判所が判決をくだすことです。

上記の様な手続を通して決めていくことになります。

財産分与の時期

財産分与を行う時期についてですが、財産分与は離婚と同時に決められることが一般的です。しかし、離婚の際に財産分与の取り決めをしなかった場合であっても、離婚後に財産分与を請求することは可能です。ただし、財産分与を請求できる期間は、離婚したときから2年以内という期間制限がありますので、注意が必要です。

財産分与と税金

財産分与と所得税

財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります。
この場合、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となります。
次に、分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で土地や建物を取得したことになります。
したがって、将来、分与を受けた土地や建物を売った場合には、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかを判定することになります。

財産分与と贈与税

離婚時の財産分与として、不動産などの財産を相手方から受け取った場合でも、贈与税はかからないのが通常です。財産分与は、財産の贈与を受けるでは無く、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のためにおこなわれるものだからです。

ただし、次のいずれかにあてはまる場合には、財産分与であるとは認められず、贈与であると判断されるため贈与税がかかります。

①分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合

②離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合

ただしよほど極端なことをしない限り、現実に離婚して財産分与がおこなわれた場合にその金額が多すぎるとして贈与税が課税される心配は無いと考えます。

財産分与と不動産取得税

不動産取得税は、不動産(土地、建物など)を取得した際、不動産の取得者に課税されるものです。この取得には、売買による場合だけでなく、贈与等も含まれます。
*相続による取得は含まれません。

財産分与により不動産を取得した場合では、夫婦財産の清算を目的としておこなわれた財産分与の場合には、不動産取得税が課税されません。しかし財産分与を目的とする不動産の所有権移転であっても、それが清算的な財産分与ではなく、慰謝料や離婚後の扶養を目的とする場合には、不動産取得税が課税されることになります。

財産分与の税金の具体例

財産分与により取得した土地・建物の譲渡について

(質問事項)
夫が今から20年前に取得した土地に妻が居住用建物を建築して居住していた。今から10年前に協議離婚により妻が夫の所有する土地を財産分与により取得しました。
その後妻はその不動産に居住し続け、本年に売却しました。
その時の譲渡所得の計算方法を教えてくだい。

(前提条件)

①土地取得費(今から20年前に夫が購入)
3,000万円

②建物取得費(妻所有) 2,000万円

③財産分与(今から10年前の財産分与時の時価)
4,000万円

④売却価額(本年) 8,000万円

⑤売却時の建物未償却残高(本年)
1,000万円

⑥譲渡経費は無いものとする。

(譲渡所得の計算)

譲渡所得は土地や建物の売却価額から取得費、譲渡費用を差し引いて算出します。

①長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日から所有期間が5年を超えるもの)

②短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日から所有期間が5年以下のもの)

長期譲渡所得の方が税率が低く設定されています。

③3,000万円の特別控除

居住用不動産を譲渡した場合、一定の条件のもと譲渡益に対して3,000万円控除してくれます。

(具体的計算)

売却価額-取得費-譲渡経費―特別控除(3,000万円)×税率=譲渡所得税

80,000,000円―30,000,000円―10,000,000円―30,000,000円=10,000,000円

10,000,000円×20.315%=2,031,500円

となると考えますが、実際は違います。財産分与を受け

ているので、財産分与時の時価で取得したとみなされます。

80,000,000円―40,000,000円―10,000,000円―30,000,000円=0円

譲渡所得税はかかりません。

*財産分与を受けた時は取得費に注意してください。