役員に対する賞与支給の注意点
役員に対する賞与支給
法人が従業員に支払う給与や賞与は原則としてすべて損金に算入することができますが、役員に支払う役員報酬は法人税法上で支給時期や金額が細かく定められており、基本的に毎月固定額でなければ、損金算入することが認められていません。
そのため役員に対する賞与は一般的に損金として認められていませんが、例外としてあらかじめ役員賞与の支給日や金額などを決定した届出(事前確定届出給与に関する届出書)を税務署に提出し、その内容どおりの支給が行われた場合は、損金算入することが認められています。
「事前確定届出給与に関する届出書」の提出には期限や注意点などがありますので、今回はそちらついて紹介したいと思います。
「事前確定届出給与に関する届出書」作成の流れ
役員賞与を支給する場合、まずは株主総会等を開催し、支給対象の役員・支給時期・支給金額を決定します。
決定する際には税務調査に備えて、株主総会等の議事録を作成・保存しておきましょう。
届出の際に示した金額や時期が実際の支給内容と異なる場合は全額損金算入が認められなくなってしまうため、決定の際には財務状況を確認し会社の利益や資金繰りまで考慮したうえで、無理のない金額にすることをお勧めします。
「事前確定届出給与に関する届出書」の提出期限は、既存の法人の場合は、株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日、
またはその会計期間開始の日から4か月(確定申告書の提出期限の延長の特例に係る税務署長の指定を受けている法人のうち、一定の通算法人については5か月、それ以外の法人についてはその指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日のうちいずれか早い日までに提出する必要があります。
また新設に設立した法人の場合は、その設立の日以後2か月を経過する日までに提出する必要があります。提出期限を過ぎてしまいますと役員賞与を支給しても損金算入は認められませんので注意しましょう。
事前確定届出給与支給における注意点
事前確定届出給与は届出に記載した支給日に額面どおりの金額を支給しなければならず、支給日が1日、支給金額が1円でもズレると全額が損金として認められなくなってしまう可能性があります。
年に複数回の支給を予定している場合も同様で、そのうち1回でも届け出通りに支給できないと全額が経費になりません。例えば年2回の支給で、1回目は支給日と金額を届出通りに支給したとしても、2回目の支給を届出通り支給しなかった場合は、基本的には1・2回目ともに損金として認められなくなるため注意しましょう。
事前確定届給与は法人の節税対策として用いられるケースもあり、当初見込んでいた利益よりも少なくなった場合は、事前確定届出給与の支給をやめることもできます。例えば届出書では当初事前確定届出給与を100万円の支給を見込んでいましたが、業績悪化などによりその支給をしなかった場合、支給額が0円となるため損金不算入額も0円となります。届出額と異なる金額を支給した場合は、その全額が損金不算入となりますが、支給額が0円の場合そもそも損金算入する金額がないため、損金不算入額も0円となります。事前確定届出給与を辞退する場合は支給日が到来する前に役員からの辞退届を受領して株主総会等で不支給の決議をする必要があります。もしこちらの手続きを行わないと支給日が到来した段階で役員に報酬請求権が発生してしまい、源泉所得税が課税される可能性がありますので注意しましょう。
また、事前確定届出給与を支給する場合、税法上では賞与扱いとなります。源泉所得税の計算する場合は賞与用の源泉所得税率を用いましょう。
まとめ
今回は役員賞与を支給する上での「事前確定届出給与に関する届出書」手続きの注意点等について紹介しました。
事前確定届出給与は、適用要件を理解し手続きを正しく行えば法人税の負担を減らすことができます。
しかし、手続き方法が厳密に定められているため、手続きを一つ間違えると、税務リスクを招く恐れ があります。
役員賞与支給は届出書提出から支給日までに日にちがあるため資金繰りや支給忘れに注意して、有効に活用していただければと幸いです。
記.名古屋事務所1課
