2025/07/31

予定納税について

予定納税の概要

予定納税とは、簡単に言うと「税金の前払い」です。
対象者は個人事業主や株式会社などの法人といった「事業者」で、前年または前事業年度の納税額が一定以上の場合に、前年または前事業年度の納税額を計算の基礎として、今年または当事業年度の税金の一部を前もって納める制度です。
納めた予定納税額は、確定申告によって計算された年税額から税金の前払いとして差し引かれ、その残りを納めることとなります。

廃業や業績悪化等により、納めた予定納税額が年税額を超えることとなった場合には、その超過額が還付されます。還付加算金(受取利息のようなものです)が付く場合もあります。
予定納税には税目ごとに納期限が定められており、納期限までに納税しない場合には加算税や延滞税が課されるので注意が必要です。

国税(所得税、法人税、消費税)だけでなく、地方税(法人住民税、法人事業税)にも予定納税の制度はあります。(今回は省略します。)

所得税、法人税、消費税の予定納税

所得税

(1)対象者
原則、前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上の個人事業主など。

(2)納期と回数
年2回に分けて納付します。
・第1期分:7月1日~ 7月31日
・第2期分:11月1日~11月30日
なお、納期限が土・日・祝日の場合は、その翌営業日が納期限となります。(法人税、消費税も同様です。)
    
(3)納税額
原則、予定納税基準額の1/3ずつを、それぞれの納期に納めます。

法人税

(1)対象法人
原則、前事業年度の法人税額が20万円を超える法人。

(2)納期と回数
当事業年度開始後6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内(=8ヶ月目の末日まで)に1回納付。
(例)3月決算法人:10月1日~11月30日

(3)納税額
2つの計算方法があります。
① 前期実績方式(予定納税)
前事業年度の法人税額の1/2(申告不要=みなし申告)

② 仮決算方式(中間申告)
当事業年度開始から6ヶ月間の所得金額に基づき計算されます。(納期限までに申告が必要です。)計算の結果、納税額がマイナスとなっても還付を受けることはできません。なお、仮決算方式により計算された納税額が前期実績方式により計算された納税額を上回る場合は、仮決算方式は適用できません。

消費税

(1)対象者
原則、前年又は前事業年度の消費税額(国税分のみで地方消費税を含みません。以下同じ。)が一定額以上の個人事業主や法人。

(2)納期と回数
前年又は前事業年度の消費税額に応じ、回数が変わります。

(前年又は前事業年度の消費税額)    (回数と対象期間)
48万円以下                 無し
48万円超~  400万円以下        年1回(6ヶ月)
400万円超~4,800万円以下        年3回(3ヶ月ごと)
4,800万円超               年11回(毎月)
納期は、通常、各予定納税(中間申告)対象期間終了後2ヶ月以内です。

(3)納税額
2つの計算方法があります。
① 前期実績方式(予定納税)
(前年又は前事業年度の消費税額)       (納税額)
48万円以下                  無し
48万円超~  400万円以下         前期消費税額の1/2 
400万円超~4,800万円以下         前期消費税額の1/4
4,800万円超                前期消費税額の1/12(申告不要=みなし申告)

② 仮決算方式(中間申告)
各中間申告対象期間の消費税額に基づき計算されます。(納期限までに申告が必要です。)計算の結果、納税額がマイナスとなっても還付を受けることはできません。
なお、法人税と異なり、消費税においては、仮決算方式により計算された納税額が前期実績方式により計算された納税額を上回っても、仮決算方式を適用することができます。
また、前年又は前事業年度の消費税額が48万円以下であっても、「任意の中間申告制度」により自主的に年1回の中間申告をすることもできます。その場合の納税額は前期納税額の1/2となります。

予定納税の減額申請

所得税

予定納税の義務のある方で、廃業、休業又は業況不振等により、今年分の所得が前年分より少なくなる見込みがある場合に、予定納税額の減額を求める手続です。

(1)対象者
例えば、次の①~④のような場合で、本年分の申告納税見積額が、税務署から通知された予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる方
① 廃業や休業、失業をした場合

② 業況不振などのため、本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる場合

③ 災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた場合

④ 次の(イ)~(ホ)のように、本年分の所得控除額や税額控除額が前年分と比較して増加する場合
(イ)災害や盗難、横領により住宅や家財に損害を受けたなどにより雑損控除を受けられる場合
(ロ)多額の医療費を支出したため、医療費控除を新たに受けられる場合や前年よりも医療費控除額が増加する場合
(ハ)配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除を新たに受けられる場合や、これらの控除の対象となる人が増加した場合
(ニ)上記以外の各種所得控除(社会保険料控除など)を新たに受けられる場合や、これらの控除額が増加する場合
(ホ)住宅ローン控除などの各種税額控除を新たに受けられる場合や、これらの控除額が増加する場合
※ 令和7年度税制改正における基礎控除の引上げや特定親族特別控除の創設については、申告納税見積額の計算上、考慮されませんので、④の所得控除額が前年分と比較して増加する場合には含まれません。
なお、上記①~④以外の場合でも、特殊な事情が生じたことにより、予定納税額の減額を申請することができる場合があります。

(2)申請書の提出時期
・第1期分及び第2期分     : 7月1日~ 7月15日
・第2期分のみ及び特別農業所得者:11月1日~11月15日
提出期限が納期限(7月31日、11月30日)と異なりますので、注意が必要です。なお、提出期限が土・日・祝日の場合は、その翌営業日が提出期限となります。

法人税、消費税

上記の仮決算方式による中間申告が減額申請に相当します。予定納税は「税金の前払い」ではありますが、多くの事業者にとっては事業活動、強いては資金繰りにおいて非常に重要なポイントとなります。
前期決算確定時点で当期の予定納税額を知ることができますので、必ず資金計画に織り込み、必要に応じて減額申請や仮決算の制度を利用して下さい。

記.大阪事務所1課