青色事業専従者給与
家族への給与は、原則として必要経費にならない
個人事業主の場合、所得税法第57条では、生計を一にする配偶者やその他の親族に支払う対価は、原則として必要経費に算入しないこととされています。
これは、家計と事業のお金が混同しやすく、自由に給与額を決められると所得を意図的に分散できてしまうため、不当な税負担軽減を防ぐことを目的としています。
ただし、青色申告者については一定の要件を満たし、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している場合には、その給与のうち労務の対価として相当であると認められる金額は必要経費に算入することが認められています。
青色事業専従者給与とは
青色事業専従者給与として認められる要件は、次のとおりです。
・青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
・その年の12月31日現在で15歳以上であること
・その年を通じて6か月を超える期間(年の中途で開業した場合などを除きます)、専らその青色申告者の営む事業に従事していること
この「専ら従事している」という要件には、平日は会社員として勤務し、休日だけ家業を手伝っているような場合は、原則として専従者とは認められないため注意が必要となります。
一方、農業などの季節によって繁忙期・閑散期がある事業では、事業の実態を踏まえて判断される場合もあります。
青色事業専従者給与に関する届出書の提出
青色事業専従者給与を必要経費とするためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出する必要があります。
届出書には、専従者の氏名、職務内容、給与の支給時期、支給方法、支給金額等を記載します。
提出期限は、原則として青色事業専従者給与を必要経費としようとする年の3月15日までとなります。年の途中で開業した場合や、新たに専従者となった場合には、その日から2か月以内などの期限が設けられています。届出を提出していなければ、実際に給与を支払っていても必要経費として認められませんので、注意しましょう。
また、家族だから給与額を自由に給与額を設定できるわけではありません。
国税庁では、必要経費となるのは「労務の対価として相当であると認められる金額」とされています。
適正額を判断する際には、従事している仕事内容、勤務時間や勤務日数、経験や能力、事業への責任の程度、同業種・同規模事業者で同様の業務に従事する人の給与水準などを総合的に勘案します。
例えば、毎日経理処理や請求書の発行、電話応対、顧客対応などを担当している配偶者に相応の給与を支払うことは問題ありません。
しかし、月に数日しか手伝っていないにもかかわらず高額な給与を支払っている場合には、その一部または全部が必要経費として認められない可能性がありますので勤務日報、タイムカード、業務日誌、担当業務が分かる資料等の勤務実態を保存しておくことをおすすめします。
家族だからこそ、第三者にも説明できる勤務実態を残しておくことが重要となります。
また、青色事業専従者となった配偶者や親族は、その年について配偶者控除や扶養控除の対象にはならないので注意しましょう。
そのため、「扶養控除を受ける方が有利なのか」「専従者給与を支払った方が有利なのか」は、所得金額や家族構成などによって異なってきます。
給与額によっては所得税・住民税だけでなく、国民健康保険料などにも影響するため、税金だけで判断するのではなく、家計全体で検討することが大切となります。
白色申告の場合
白色申告の場合は、青色申告のように実際に支払った給与を必要経費とすることはできません。その代わりに、「事業専従者控除」という制度が設けられています。
この制度では、実際の給与額ではなく、一定額を必要経費として控除できます。
控除額は、配偶者は最高86万円、その他の親族は1人につき最高50万円となります。
ただし、この金額がそのまま控除できるわけではありません。
実際の控除額は、「86万円(または50万円)」と、「事業専従者控除前の事業所得等の金額を、専従者の人数に応じて一定の方法で按分した金額」のいずれか少ない金額となり、事業所得が少ない場合には、86万円全額を控除できないケースもあります。
また、白色申告であっても事業専従者となるためには、青色事業専従者給与と同様、生計を一にする親族であること、15歳以上であること、その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合を除く)主としてその事業に従事していることなどの要件を満たす必要があります。
配偶者控除や扶養控除についても青色事業専従者と同様、その年について配偶者控除や扶養控除の対象になることができません。
家族が継続的に事業を支えている場合は、青色申告へ切り替えることで、実態に応じた専従者給与を必要経費に算入できる可能性があります。
また、青色申告には専従者給与以外にも、青色申告特別控除や純損失の繰越控除などさまざまな税制上のメリットもあります。
事業規模や利益の状況によっては白色申告よりも有利になるケースもあるため、青色申告へ切り替えを検討してみることをおすすめします。
まとめ
青色事業専従者給与は、家族が事業を支えている個人事業主にとって有効な制度ですが、自由に給与を支払えば経費になるというものではありません。
国税庁が示すとおり、届出書の提出、専従者の要件、勤務実態、そして「労務の対価として相当である金額」であることが重要なポイントとなります。
専従者給与は、所得税だけでなく住民税や国民健康保険料にも影響します。また、事業の利益や家族全体の税負担によって最適な給与額は異なります。
「家族だから大丈夫」と自己判断せず、制度を正しく理解したうえで有効に活用していただければ幸いです。
記.名古屋事務所1課
