2021/06/20

実家の土地を相続し売却する時の注意点

事例:相談内容

相続人は、思い出が沢山詰まった実家ですが、現在住んでる場所からは遠く管理が大変なのでどうするか相続後、5年ほど悩んでいました。
そこで売却はするけれど建物は取り壊さず、少し管理してもらえるだろうと願って隣地の方に売却相談に行きました。
そのため時価1,000万円程度の土地だけれども管理のこともあるので100万円で売却することで話がまとまりました。

この場合、売った相続人と買った隣地の方の税金はどうなるかという相談です。

土地の参考価格
時価            1,000万円
購入時の価格   先祖代々の土地のため不明

建物は築100年程度のため0円

課税について:売った相続人

時価1,000万円の1/10の値段で売っていますが、個人間売買については、諸事情により安く売却することもあると考慮されているため所得税を計算する場合の売却金額は100万円です。

先祖代々の土地なので概算取得費で計算すると納税額は、所得税と住民税合わせて19万円です。(※復興特別所得税は省略しています。)

(売却金額100万円 - 概算取得費 5万円)× 20% 

※要件を満たせば「低未利用土地等の100万円特別控除」の適用を受けることもできます。
特例を適用すると納税額は0円になります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3226.htm

上記の特例については、次回詳しい内容をお伝えします。

課税について:買った隣地の方

時価よりも低い値段で買っていますので、時価と売買金額との差額に贈与税が課税されます。
つまり安く購入できたため税金計算上は、売主から買主に贈与があったと考えます。

贈与税の納税額は191万円です。

(時価1,000万円 - 売却金額100万円 - 基礎控除110万円)×40% - 125万円

親族間などの取引ではなく、第三者間取引であるため売買金額について問題なさそうですが贈与課税されることがあるので注意が必要です。

例えば隣地の方が、相続人の希望を無視して翌月、不動産会社に1,000万円で転売したとします。

そうすると6月に100万円で購入し7月に1,000万円で売却して900万円儲かりましたと記載されている所得税の確定申告書を税務署が見れば1ヶ月で900万円も価値が増加する土地に疑問を持ちます。税務署でなくても疑問に思いますよね。
そこで税務署が調査すれば安く買っているということで贈与税が課税されるという流れになります。
ちなみに転売時の隣地の方の所得税と住民税は351万円です。

(不動産会社への売却金額1,000万円 - 取得費100万円 )×39% 

購入価格100万円ではなく贈与税が課税された800万円を取得費として控除したくなりますが、実際にお金を払った100万円しか控除出来ません。結果として隣地の方は、所得税、住民税、贈与税の合計542万円を納税することになります。

都心の数億円の取引だけではなく地方の不動産売買でも取引金額によって思わぬ課税を受けることがありますのでご注意下さい。また不動産売買の時価算定については税務上具体的な規定がなく個別案件毎に判断することになりますので売却前に専門家に相談することをお勧めします。

記.名古屋事務所1課