無償増資について
無償増資とは?
無償増資とは、株主から新たなお金の払い込みを受けずに、会社内部にすでにある資本準備金・利益準備金・その他の剰余金を資本金に振り替えることで、登記上の資本金額を増やす方法です。
実際に資金の流入があるわけではないため「形式的増資」や「帳簿上の増資」とも呼ばれ、主に財務構成の是正や株主還元を目的として実行されます。
無償増資は、貸借対照表上の「純資産の部」における計上項目を移動させる手続きです。具体的には、会社が過去に蓄積した利益である「利益剰余金」や、資本取引から生じた「資本準備金」などを資本金へと組み入れます。この際、会社全体の純資産額に変化はなく、あくまで帳簿上の振り替えとして処理されるのが特徴です。
有償増資との最大の違いは、会社への資金の流入があるかどうかです。有償増資は新たに株式を発行して、投資家や株主から実際に代金をを受け取ることで設備資金や運転資金を確保します。対して、無償増資は既に社内にある資金を原資とするため、手元現金が増えることはありません。
そのため、貸借対照表の影響として「有償増資」は純資産の額が増加しますが、「無償増資」は純資産内の内訳が変わるのみで純資産の額は増加しません。
無償増資のメリット・デメリット
【メリット1】企業の信用力向上
無償増資のメリットは、企業の信用力が向上することです。資本金は会社の基本財産であり、事業の安全性や規模を測る重要な指標となります。建設業などの許認可事業では一定額以上の資本金が要件となる場合があり、増資によってこうした公的な基準を満たすことが可能です。また、金融機関との融資交渉時の印象改善や取引先との信用補強にも繋がります。
【メリット2】資金調達を伴わない
無償増資は有償増資のように新たに資金調達を行わないため、返済義務が発生しません。会社が過去に蓄積した利益準備金や利益剰余金などを活用するため、新たな借金を負うことなく企業体質を強化することが可能です。
【デメリット1】法人住民税の均等割が増加
法人住民税には均等割という利益の有無に関係なく、都道府県や市町村に毎事業年支払い続ける固定的な税金があります。この均等割は資本金の額と従業員数に応じて金額が変わります。資本金の額が1,000万円を超えてくると均等割の額が増加するため、恒久的なコストが増加することになります。
【デメリット2】中小企業優遇税制・外形標準課税への影響
日本の税法では資本金の額によって受けられる中小企業向けの優遇処置が変わります。資本金が1億円を超えると法人税の軽減税率、少額減価償却資産の損金特例、交際費の課税特例、欠損金の繰越控除制度など中小企業として恩恵を受けていた税制が段階的に適用できなくなります。また、資本金が1億円を超えると法人事業税における外形標準課税の対象となり、外形標準課税は「会社の規模(資本金額・給与総額など)」に対して課されるため、赤字であっても税金が課税されることになります。
手続きの流れ
増資をするにはいくつかの手続きを踏む必要があります。
【一連の流れ】
1 株主総会を開いて決議をする
2 法務局で登記を行う
3 税務署などへ書類を提出する
1 まず株主総会を開いて資本金に組み入れる額を決定する必要があります。決議では増資の効力発生日も明確に定める必要があり、これら一連の決定事項を記した「株主総会議事録」は、後の登記申請において極めて重要な証明書類となります。
2 効力発生日から2週間以内に本店の所在地を管轄する法務局で変更登記を申請しなければなりません。この期限を過ぎると、過料という制裁を受けるリスクがあるため、スケジュール管理には十分な注意が必要です。申請時には、株主総会議事録や株主リストに加え、資本金の額が計上されたことを証する書面などが必要となります。また、登記の際には登録免許税を納付する必要があり、税額は増加した資本金の額に0.7パーセントを乗じた金額(3万円に満たない場合は3万円)と定められています。司法書士に手続きを依頼する場合は報酬が別途かかります。
3 法務局での登記手続きが完了後、所轄税務署・県税事務所・市役所に「異動届」という書類を提出します。異動届を記入し、増資登記後の履歴事項全部証明書、株主総会議事録を添付して提出すれば一連の手続きは完了です。
無償増資は、見かけ上の資本強化として非常に有効な手法で現金を用意することなく企業の信用力を向上させることができる一方、税負担の増加、税制優遇が受けられなくなる場合もあります。また、会計処理、決議書類の作成、登記申請まで、一連の手続きが発生します。そのため専門家と連携しながら、自社の状況に合った判断をすることが大切です。
記.大阪事務所4課
