2017/10/30

夫婦間の資産の譲り渡し等の財産分与

離婚と税金というテーマにて、夫婦間の資産の譲り渡し等、「財産分与」に関する内容を書かせていただきます。

財産分与について

財産分与とは民法768条に定められている財産分与請求権をさします。

これは協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるという内容です。
つまり財産分与は婚姻生活中、夫婦間共同で蓄えてきた夫婦財産を夫婦各人の個人財産に分けることを言います。

この財産分与の対象となるものとしては現金、預金、生活品(家電や家具)、土地、建物と多くあります。

夫もしくは妻名義にて購入したとしても婚姻生活中に購入したものに対しては夫婦間で蓄えてきたものとして分与の対象となります。
身近な例ですと住宅(戸建やマンション)があります。
その住宅を夫もしくは妻名義で購入し、離婚の協議中、いまだ夫もしくは妻名義であったとしても、財産分与の対象となり、双方、財産分与を請求することができます。

ただし、婚姻前に個人で貯めた現金、預金、生活品(家電や家具)、土地、建物等、夫婦間で共同で蓄えてきたものでない財産は財産分与の対象外となります。

次に財産分与と税金についてご説明致します。

財産分与での贈与税と不動産取得税

財産分与での贈与税

離婚して財産をもらったときの贈与税について国税庁のタックスアンサーに以下のように記載があります。

「離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。」

ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。

1.
分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。

例えば、夫婦共有の財産が3,000万円あったとします。
一般的には憲法24条2項(条文内容は割愛します。)に挙げられているように2分の1ルールという内容が適用されます。
それに従い、夫1,500万円と妻1,500万円にて分与すると贈与税はかかりませんが、協議により夫0円、妻3,000万円にて分与すると多すぎる部分に該当していまい、1,500万円多く分与した部分に対して贈与税がかかることが考えられます。

ただし、上記のように「その他すべての事情を考慮」という部分もありますので、事情を説明できる金額であれば、多すぎる部分に該当しないこともあるかと思います。

2.
離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。

財産分与と不動産取得税

通常、住宅(戸建やマンション)を購入したり、贈与で取得したりすると不動産取得税がかかります。
財産分与についても原則かかりますが、その財産分与が夫婦共有財産の精算を目的として行われた場合等、一定の要件を満たせば減免措置があります。(要件は都道府県ごとに違います。)
だだし、慰謝料や離婚後の扶養を目的とする場合は不動産取得税がかかります。

財産分与と譲渡所得

離婚して住宅(戸建やマンション)などを渡したとき(渡す側)について国税庁のタックスアンサーに以下のように記載があります。

「財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります。
この場合、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となります。」

以上のように渡す側についても物件によっては購入した当時よりも時価が高騰したりすると譲渡所得が発生しますが、マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。

つまり3,000万円までの譲渡益には譲渡による所得税は発生しないということです。

しかし、こちらは夫婦間の譲渡には適用されませんので、離婚成立後に他人となってから財産分与することが条件となります。

また、マイホームを売却して、新たにマイホームを購入した場合に旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、下記の要件(補足)に該当しなければ、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。

さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

補足:
<繰越控除が適用できない場合>
     
新居宅に10年以上の住宅ローンがない場合
合計所得金額が3,000万円を超える場合
    
<損益通算及び繰越控除の両方が適用できない場合>
     
旧居宅を売却した年の前年及び前々年に居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除等を適用している場合